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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)833号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人堤牧太、同海野晋吉の上告理由書は末尾添付理由書記載のとおりである。

第一点について。

しかしながら、記録によれば、右池田吾十は被上告人大分県選挙管理委員会の委員長であつたのであり、地方自治法一八七条二項によつて右委員会を代表することができ、訴訟においても、被上告人を代表することができたのである、その後本訴が原審に係属する間に同人は委員長ではなくなつたけれども、その後もなお委員の職にあつたのである。

地方自治法一九三条、一五三条一項によれば選挙管理委員会の委員長は吏員をして臨時に代理させることができるのであつて、選挙管理委員会の委員は吏員ではなく、右規定の適用があるとは言えないけれども、右規定の趣旨から言つて、委員もまた、委員長から委任があれば、委員長を代理することができるものと解するを相当とする。記録によれば右池田吾十に対し委員長の委任のあつたことも明白であるから、同人のした訴訟行為はこれを無効とすべき理由はない。論旨は理由がない。

第二点について。

所論は結局、本件選挙における同筆の三票は不正投票であるから無効だと主張する。しかし上告人主張の諸般の事実によつても未だ右三票が不正の投票であると断定することは出来ないばかりでなく、代理投票者が何人に投票したかは、投票の秘密であり、たとえ述ベたからとしても、直ちにそれを信ずべきものでもないから、原判決が同一筆蹟の三票を無効でないとしたことは相当である、論旨は理由がない。

第三点について。

所論は村選挙管理委員会の本件異議決定手続等が違法だと主張するのであるが、窮局するところ原判決の認定を非難するに過ぎないから論旨は採用するに足らない。

以上説明のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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